本人による曲解説
1. 時々ドキドキ
こんなふわふわした曲をつくってみたいとずっと思っていました。
メロディに導かれるように歌詞が浮かんできました。黒川紗恵子のクラリネットが変化球のように心を惑わせます。
2. 寝ても覚めても
人とズレているなと思うことは、しょっちゅうですが、それでも生きていくんだという、自分への宣言でもあります。
最近コーヒーが少しだけ飲めるようになりました。
3. 月曜日の夜に
この曲だけ少し前につくりました。
20歳の頃に1度だけお酒で記憶をなくしたことがありますが、それ以来、人に迷惑をかけることはしていません。お酒はほどほどに。
4. 蒼いアジサイが泣いている
よく利用するコンビニのそばの自転車置き場の片隅に、毎年蒼いアジサイが咲くのですが、咲いてない期間、これがアジサイだと忘れるくらい「ただの枝」になっているので、気をつけないと枝ごと踏みつけられてしまいそうなのです。ところがある時から誰かが板で枝の周囲に囲いをつくってそれを防いでいました。咲いている時は本当に美しいのに梅雨時にしか咲かないせいか、桜よりも注目されませんが、一番好きな花です。
5. ガパオNo.5
はじめてオリジナルのインストをつくりました。昨年はなぜかタイ料理のガパオにはまり、このタイトルしか思いつきませんでした。サカモトジャイ庵のスティールパンの音色が時にピリっと、また南勇介(b)のスパイシーなアレンジが光る1曲になりました。
6. るるるるる
ここ2年、東京にも雪が積もり、インドアな私はさらに外出しなくなり特になんの誘いもないので、1月2月は大抵曲をつくっていました。そんな中できた曲です。雪が降ると、家の周りはさらにシンとして音という音がこの世からなくなったみたいに静かになります。
7. 哀しきサングラス
小学生のころ「子供は遊ぶもの」という大人たちの視線が好きではありませんでした。もっぱらファミコン全盛期だったため、この頃からインドア生活でしたが、夏休み空けにクラスメイトが海に行った、どこに行った、という話を聞いて少しうらやましかったのを覚えています。
上野洋によるフルートの音色が余計に哀しく響きます。
8. 8月のコラール
まだライブでは披露したことがない一番新しい曲です。気づけば年々、過去に対する想いがふくらみ、こんな後ろ向きな歌をつくっていいものかと思ったりもしましたが、本当にうたいたいことはこういうことなんだと、自分で納得しています。今の自分には輝かしい時間はさらにまぶしく映るのです。
9. トロントさん
誰にアピールするわけでもなく、とんでもなく天使のように優しい人ってたまにいます。そんな人たちが主人公です。春のある日、昼間の空いてる電車に乗っていたら、スーツ姿の人、ロリータファッションの女の子、制服姿の人、あらゆる人がトロン、とした優しい目でぼーっとしていました。それ以来、私はそういう人を『トロントさん』と呼ぶことにしたのです。目をこらせば、耳すませば、トロントさんはすぐ隣にいるのかもしれません。
10. 石神井川であいましょう
石神井川は東京に流れる少しマイナーな川ですが、春になれば川沿いに桜がアーチ状に咲き乱れ、天気のいい日にはふくよかな猫がひなたぼっこしている天国のような場所です。犬にはなりたくないですが、猫にはなってもいいなと、ここを歩いているとそう思うのです。
(文/中山うり)